在宅ワークの相談で「書斎がほしい」と言われたとき、面積や予算の都合で、個室をあきらめる家は少なくありません。
ただ、音の問題は壁をつくることだけが答えではありません。Web会議の音は「聞く音」と「話す声」に分けて考えると、個室がなくても打てる手が見えてきます。この記事では、私が耳をふさがない骨伝導イヤホンを使ってきた体験をもとに、リビング横のワークスペースを提案するときの考え方をご紹介します。
購入ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B09LQSBPWJ?tag=hidenori2458-22
公式サイト:https://www.kimuras.jp
X:https://x.com/hidenorikimura
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/hidenorikimura/
書斎の相談は、まず「音」を分けて聞く
ワークスペースの打ち合わせでは、机の大きさとコンセントの数から話が始まりがちです。でも、住み始めてから困るのは音のことが多いのではないでしょうか。
Web会議の音には、2つの向きがあります。
- 聞く音:会議の相手の声。スピーカーで流すと、家族のいる部屋に広がります。
- 話す声:自分の声。部屋の中へ出ていき、相手のマイクには家の音も一緒に入ります。
個室は、この2つを壁でまとめて解決する方法です。個室がつくれないなら、聞く音は「耳元」で、話す声は「間取り」で、別々に解決します。
聞く音は、耳元で解決できる

私が使ってきたAFTERSHOKZの骨伝導イヤホン「AEROPEX」
聞く音は、イヤホンを使えば家族の部屋には広がりません。ただ、ふつうのイヤホンは耳をふさぐので、今度は家の音が聞こえなくなります。
私がリモートワークで使ってきたのは、骨伝導イヤホンの「AEROPEX(エアロペクス)」です。頬の骨の近くに当てた振動で音を伝えるので、耳の穴はあいたままです。ノイズキャンセリングのイヤホンも使っていますが、家で何かを聴きながら働く用途では、こちらのほうが快適でした。
26gと軽く、付けたまま長い時間を過ごしても苦になりません。低音は少し物足りないものの、人の声の帯域ははっきり聞こえます。音楽を楽しむより、会議やポッドキャストのように人の話を聞く用途に向いています。
耳があいているので、家族の声やインターホンの音はそのまま聞こえます。個室で扉を閉めるのとは逆に、家族の気配を残したまま、仕事の音だけを自分に届ける形です。
骨伝導には、苦手なこともある

肌に当たる部分は小さく平ら
便利な道具ですが、お客様に勧めるときは弱点も伝えたいところです。
骨伝導は本体が震えて音を伝えるので、音量を上げると周りにも漏れます。私がiPhone 12 Proで試したときは、最大音量でははっきり音が漏れていて、音量50%くらいまでなら漏れませんでした。耳があいている分、周りがうるさい場所では音量を上げたくなるので、静かな場所ほど実力を発揮します。
ここが間取りの話につながります。テレビや食洗機のすぐそばに机を置くと、音量を上げることになり、音漏れも増えます。耳元の道具が働くかどうかは、机の置き場所で変わるのです。
そしてもう一つ、イヤホンで解決できるのは聞く音だけです。話す声は、どんなイヤホンでも部屋に出ていきます。
話す声は、間取りで解決する
個室にしなくても、話す声の問題は図面で小さくできます。私なら、次の4つを確かめます。
1つ目は、机の向きです。声は顔の向いた方へ進みやすいので、リビングのほうを向いて話す机より、話す先が壁やカーテンになる配置を基本にします。
2つ目は、距離と遮り方です。腰壁や本棚、引き戸で区切るだけでも、視線と気配はかなり整理できます。ただ、天井までふさがない間仕切りは、音が上から回ります。「声を消す」のではなく「気にならない程度に下げる」区切りだと、施主様に正直に伝えておくことが大切です。
3つ目は、反射です。ガラスやタイルなど硬い面に囲まれると、声が響いて、相手のマイクにも響きが入ります。カーテン、本棚、ラグのようにやわらかいものや凹凸のあるものを机のまわりに置ける計画にしておくと、聞き取りやすさが変わります。
4つ目は、カメラに写る背景です。壁に向かって座ると、今度は背中側に部屋が写ります。席の後ろがリビング全体だと、家族が通るたびに気をつかいます。背中側に本棚や引き戸、カーテンを用意して、写る範囲だけ区切れるようにしておくと、会議のたびに片付ける手間がなくなります。
この4つは、部屋の角やアルコーブに机を置くと整えやすくなります。前と横を壁にして、背中側だけ軽く区切る。リビング横の小さなくぼみが、書斎の代わりになります。
充電の定位置まで図面に入れる

磁石で付く専用の充電ケーブル
私のAEROPEXは、専用の磁石式ケーブルで充電します。向きを気にせず付けられる一方、ケーブルをなくすと困ります。
毎日使う小物は、置き場所が決まっていないと「会議の直前に電池がない」が起きます。机のそばにコンセントと、イヤホンを掛けておける小さな定位置を用意しておくと、この手の小さな不満は減ります。設計の段階なら、ほとんど費用をかけずにできることです。
会議が多い人には、マイク付きという選択肢

マイクが口元まで伸びるタイプのOpenComm
話す時間が長い方には、口元までマイクが伸びるタイプもあります。同じShokzの「OpenComm2 2025 Upgrade」は、会議用につくられた骨伝導ヘッドセットで、重さは約35g、最大16時間の連続通話ができます。私はこのシリーズを試していませんが、通話が中心の方には、以前からこちらをお勧めしています(Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B0DSJBWQ3X?tag=hidenori2458-22)。
口元にマイクが近いほど、小さな声でも拾ってもらえます。声を張らなくて済めば、それ自体が家族への配慮になります。イヤホン選びも、間取りと同じ音の計画の一部だと考えてください。
在宅ワークの相談を受けたときに
個室がつくれない家のワークスペースで、確認しておきたいことをまとめます。
- 週に何回、何時間くらいWeb会議があるか。そのとき家に誰がいるか
- 聞く音はイヤホンで解決する前提にできるか
- 話す先が壁やカーテンになる机の向きにできるか
- テレビや家電の音源から机を離せるか
- 背中側を本棚や引き戸で区切り、カメラに生活が写らないようにできるか
- 机のそばにコンセントと、小物の定位置があるか
ここは、工務店の皆さんにぜひ押さえておいていただきたいポイントです。「書斎がほしい」と言われて、個室をつくるか、あきらめるかの二択にしてしまうと、面積が足りない家では話が終わってしまいます。打ち合わせで「聞く音はイヤホンで解決できます。話す声は机の向きと区切り方で小さくできます」と分けて説明できると、個室がなくても働ける家という提案になり、他社との差別化につながります。
もう一つおすすめしたいのは、声の届き方を施主様に体験してもらうことです。モデルハウスのワークスペースで営業の方が話し、ダイニングに座った施主様にどのくらい聞こえるかを確かめてもらう。数字で説明するより、ずっと伝わります。お子様の小さいご家庭なら、「お子様の声が聞こえたまま働けます」という一言が、個室より響くこともあります。
なお、私が使ったAEROPEXは、ブランド名がAFTERSHOKZからShokzに変わり、今は「OpenRun」という名前で売られています(26g、最大8時間の連続再生、IP67の防塵防水)。Amazonでの価格は16,255円でした(2026年10月時点)。OpenComm2 2025 Upgradeは、Amazonで20,800円でした(同)。
「個室がない」は、弱点ではない
家で働く人にとって、扉を閉めれば静かになる個室はたしかに魅力です。でも、小さなお子様がいる家では、閉じこもらずに気配を感じながら働きたい方もいるはずです。
聞く音は耳元で、話す声は間取りで。そう分けて考えると、リビング横の小さな場所が、ちゃんと働ける場所になります。面積が足りないから書斎をあきらめる、ではなく、この家に合う働き方を一緒に考える。そこまで踏み込んで提案できることが、在宅ワークの時代に選ばれる工務店の強みになると、私は考えています。
IoTの選定、物件のコンサルについて
ご質問、お仕事の依頼はこちら:https://www.kimuras.jp/contact/
Amazonのアソシエイトとして、木村ヒデノリは適格販売により収入を得ています。


コメントをもっと見るコメントをもっと見る