在宅ワークの相談を受けると、話題の中心は机の大きさやコンセントの数になります。でも、家で働く人の一日を見ていくと、もう一つ図面に描いておきたい場所があります。仕事の合間に席を立って、一息つく場所です。
オフィスなら、給湯室まで歩くだけで頭が切り替わります。家には、その小さな移動がありません。この記事では、私がカプセル式のコーヒーマシンを仕事の相棒にしてきた体験をもとに、書斎の近くに「一杯を淹れるカウンター」をつくる提案をご紹介します。
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家で働くと、席を立つ理由がなくなる
在宅ワークは通勤がなくなるぶん、体を動かす理由も減ります。気がつくと、何時間も同じ姿勢のままだった、ということも起きます。
だからこそ、休憩は気持ちに任せるより、間取りで用意しておくほうが確実です。私の場合、その理由になっていたのがコーヒーでした。少し歩いて、一杯淹れて、戻ってくる。それだけのことで、頭の中が一度区切られます。
コーヒーでなくても構いません。お茶でも、水でも同じです。大切なのは、「席を立つと、ちょっといいことがある場所」が家の中にあることだと考えています。
休憩の道具は「手間」で続かなくなる

私が使ってきたネスプレッソのクレアティスタ・プラス
私が使ってきたのは、ネスプレッソの「クレアティスタ・プラス」です。カプセル式のコーヒーマシンで、1杯ずつ好きな豆を選んで淹れられます。BCN+Rで記事を書いた2020年の時点で、2年間毎日の仕事に使っていました。
このマシンを使って分かったのは、休憩の道具は味よりも手間で続くかどうかが決まる、ということです。
たとえば起動の時間です。入門機のエッセンサミニは、スイッチを入れてから抽出できるまで約30秒かかりました。すると、その30秒の間に別のことを始めてしまい、戻ると電源が切れている。こんなことが何度もありました。クレアティスタ・プラスは4.5秒です。数十秒の差ですが、使い勝手への影響は想像以上でした。

ミルクも自動で泡立てる。ピッチャーを外すとノズルをお湯で洗う
ミルクも同じです。ふつうのスチーマーは、使ったあとに空噴射をしないとノズルにミルクが残ります。私はこれが面倒で、以前のマシンを使わなくなったことが何度もありました。このマシンはアームを戻すとお湯で自動洗浄してくれるので、そこが購入の決め手でした。
間取りも、これと同じだと思っています。息抜きの場所が遠かったり、準備や片付けが面倒だったりすると、数週間で使われなくなります。
まず、置く場所を書斎の近くに決める
では、どこにつくるか。私なら、次の3つの場所から考えます。
- キッチンの端:水も冷蔵庫も近く、いちばんつくりやすい。ただし家族の動線と重なるので、書斎からの通り道を確かめる
- 書斎の入口や廊下の小さなカウンター:席を立つ距離がちょうどよい。水は別の場所から運ぶ前提になる
- 洗面室やパントリーの近く:水に近く、生活感を隠しやすい。休憩の場所としての気持ちよさは工夫がいる
おすすめしたいのは、書斎から数歩から十数歩くらい離れた場所です。机の横に置くと便利ですが、それでは席を立つ理由になりません。少し歩くことも、息抜きのうちです。
窓の近くにできるなら、なおよいと思います。画面から目を離して、外の光を見ながら飲む一杯は、それだけで気分が変わります。
カウンターは奥行きと上の空きを見る

背面に1.5Lの水タンク。奥行きは約41cmある
カウンターの寸法は、置くものを先に決めるとはっきりします。クレアティスタ・プラスの大きさは、幅170×奥行409×高さ309mm、重さは約5.2kgです。幅は小さくても、奥行きは40cmを超えます。
背面に水タンクがあるので、奥行きが45cmほどの造作カウンターだと、壁との間にほとんど余裕がありません。この手のマシンを置くなら、奥行きは50〜60cmを見ておきたいところです。カップやミルクのピッチャーを置く場所を含めて、幅は60cm以上あると使いやすくなります。

本体の上でレバーを上げてカプセルを入れる
もう一つ見落としやすいのが、上の空きです。このマシンは本体の上のレバーを上げてカプセルを入れます。吊戸棚の下に置くと、レバーや手が当たったり、蒸気が棚に当たったりします。タンクの水を入れるときの取り回しも考えると、上は広くあけておくのが安心です。
ここで示した数字は、私の使い方からの目安です。実際の設置条件は、選ぶ機種の取扱説明書で確かめてください。
コンセントは「数」より「回路」を見る
ここは工務店の皆さんの腕の見せどころです。クレアティスタ・プラスの定格消費電力は1,400Wあります。新しいクレアティスタ プロも同じ1,400Wです。お湯を沸かす家電は、短い時間に大きな電気を使います。
ふつうのコンセントの回路は1,500Wが目安です。電子レンジや電気ケトルと同じ回路に入ると、同時に使ったときにブレーカーが落ちることがあります。そして在宅ワークでは、同じ回路にパソコンやモニターがつながっていると、Web会議の最中に画面が消えるという最悪の形で問題が出ます。
設計の段階なら、次のように手を打てます。
- カウンターのコンセントは、書斎のパソコンと別の回路にする
- 使い方が決まっているなら、専用の回路を検討する
- コンセントの高さはカウンターの少し上にして、抜き差ししやすくする
- ケトルやスマートフォンの充電も考えて、口数に余裕を持たせる
コンセントの数は施主様からも話が出ますが、回路まで話題になることはほとんどありません。ここを押さえておくだけで、住み始めてからの不満を一つ減らせます。
水まわりとの動線は「4つの往復」で考える
カプセル式のコーヒーは、水道につなぐ必要がありません。つまり水栓のない場所にも置けます。ただ、水がいらないわけではありません。動線を考えるときは、次の4つの往復を確かめます。
- 水を入れる:タンクは1.5Lで、10杯ほど淹れられます。毎日ではなくても、タンクを持って歩くことになります
- ミルクを取りに行く:カフェラテを飲むなら、冷蔵庫までの距離が効いてきます
- 洗う:カップとピッチャーをどこで洗い、どこに伏せておくか
- 捨てる:使用済みのカプセルは約13個たまります。どこに捨て、どこにしまうか

カフェラテを飲むなら、ミルクと洗い物の動線も考えたい
ここで便利なのが、カプセルや豆、カップをしまう引き出しやカウンター下の収納です。カウンターの上に何も出ていなければ、ご来客があるときでも生活感が出ません。
書斎の近くに水がない場合は、小さな手洗いを足せるかどうかも検討の価値があります。費用はかかりますが、来客用や子どもの手洗いも兼ねられるなら、施主様の納得も得やすいはずです。
在宅ワークの相談を受けたときに
息抜きのカウンターで、確認しておきたいことをまとめます。
- 仕事の合間に、どこで、何を飲んでいるか
- 書斎から数歩から十数歩のところに、カウンターを置ける場所があるか
- 置くマシンの奥行きと高さに合わせて、カウンターの奥行きと上の空きを決めたか
- パソコンと別の回路のコンセントを用意できるか
- 水・ミルク・洗い物・ごみの4つの往復が短いか
- カプセルやカップをしまう場所があるか
ここは、工務店の皆さんにぜひ押さえておいていただきたいポイントです。書斎の打ち合わせで「働く場所」の話だけをするのではなく、「仕事の合間は、どこで一息つきたいですか?」と一言聞いてみてください。こういう提案を施主様にできると、家で働く毎日まで考えている会社だと伝わり、他社との差別化につながります。
費用の面でも、提案しやすい話です。カウンターを少し延ばす、回路を1つ分ける、引き出しを1つ足す。どれも大がかりな工事ではありません。建ててからでは難しいことも、設計の段階ならほとんど図面の上で済みます。モデルハウスにこのカウンターをつくり、打ち合わせの一杯をそこで淹れてお出しするのも、とても伝わりやすい方法です。
なお、マシンそのものは施主様の好みで構いません。正直に書くと、私が入門機のエッセンサミニと飲み比べたとき、味の違いははっきり分かりましたが、当時の約6倍という価格差を埋めるほどとは感じませんでした。価値があるのは、毎日手間なく続けられることです。設計の側は、高いマシンを勧めるのではなく、どんな機械が来ても受け止められる場所を用意しておく、と考えるのがよいと思います。
クレアティスタ・プラスは、Amazonで税込80,000円でした(2026年11月時点)。2025年10月には、同じシリーズの「クレアティスタ プロ」が121,000円で発売されています。こちらは幅197×奥行429×高さ328mm、水タンクは約2Lで、ひと回り大きくなります。
働く場所の次に、休む場所を描く
在宅ワークの間取りというと、どうしても「どこで働くか」の話になります。でも、長く働き続けるために同じくらい大切なのは、「どこで手を止めるか」です。
数歩歩いて、一杯淹れて、窓の外を見て、また席に戻る。その小さな往復を支えるのは、カウンターの奥行き、1本の回路、水までの短い動線です。どれも図面の段階でしか、きれいに解決できません。書斎の次に、休む場所まで一緒に描ける。そこまで踏み込んで提案できることが、在宅ワークの時代に選ばれる工務店の強みになると、私は考えています。
IoTの選定、物件のコンサルについて
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Amazonのアソシエイトとして、木村ヒデノリは適格販売により収入を得ています。


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