停電への備えとして、ポータブル電源を持つご家庭が増えました。施主様から「停電に備えて何を用意しておけばいいですか」と聞かれ、ポータブル電源を勧めたことのある方も多いのではないでしょうか。
ただ、ポータブル電源は「しまっておく防災グッズ」として扱うと、いざというときに役に立たないことがあります。この記事では、私自身の失敗からたどり着いた、ポータブル電源を「毎日使う設備」として住まいに組み込む考え方をご紹介します。
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しまっておいた電源は、いざというときに動かない
私はキャンプ用に、大小2台のポータブル電源を持っていました。ところが、しばらく使わずに保管していたところ、久しぶりに使おうとしたら壊れていたのです。
キャンプなら「残念だった」で済みます。でも、これが停電の夜だったらと考えると、笑えません。
使わないまま置いておくものは、充電が切れていても気づきません。操作の仕方も忘れますし、ケーブルがどこにあるかもわからなくなります。非常時にしか出さないものは、非常時にこそ使えないのです。
そこで私は考え方を変えました。ポータブル電源は「非常用」ではなく、「常用」で使う。毎日使っていれば、充電の状態も使い方も、自然と体が覚えてくれます。
最初に「どこに置くか」を決める

置き場所を決めて、毎日使う
毎日使うためには、置き場所がいちばん大事です。押し入れやクローゼットの奥に入れてしまうと、結局使わなくなります。
私がおすすめしているのは、停電で止まると困る機器のそばに、最初から常設しておくことです。具体的には次の2か所です。
- Wi-Fiルーター(光回線の機器)のそば
- 冷蔵庫のそば
停電すると、Wi-Fiが止まって情報が取れなくなり、冷蔵庫の中身も傷み始めます。逆に言えば、この2つさえ動いていれば、最悪の事態はかなり防げます。
つないでおくだけで、停電に備えられる

Wi-Fiルーターや水槽につないでおけば、停電しても止まらない(メーカー写真)
私が使っているEcoFlowのポータブル電源には、壁のコンセントと家電の間につないでおくと、停電したときに自動でバッテリーからの給電に切り替わる機能があります。私が使っていた「RIVER 2 Max」では30ミリ秒以内、後継の「RIVER 3 Max」では10ミリ秒以内に切り替わります。
ふだんは壁のコンセントの電気がそのまま家電に流れ、本体は満充電に保たれます。停電したときだけ、気づかないうちにバッテリーに切り替わる。家庭用の無停電電源装置(UPS)のような使い方です。
切り替えは完全な0秒ではないので、データサーバーのように一瞬も止められない機器には向きません。ただ、家庭のWi-Fiルーターや冷蔵庫なら十分です。
ここで、工務店の方にできることがあります。ポータブル電源を「置く場所」を、図面の段階で用意しておくことです。
- ルーターを置く棚や情報分電盤の近くに、幅・奥行きとも30cmほどの置き場と、コンセントを1口多めに用意する
- 冷蔵庫置き場の横やカウンターの下に、本体を置ける隙間をつくる
- 熱がこもらず、直射日光の当たらない場所を選ぶ
「停電してもWi-Fiと冷蔵庫が止まらない家」という提案を施主様にできると、他社と差別化できます。防災グッズを勧めるのではなく、住まいの設計として停電への備えを示せるからです。
コンセントのない場所でも使える
毎日使うには、使う場面を増やすことも大切です。
私が特に便利だと感じたのは、掃除とDIYでした。ベランダの窓を電動ツールで掃除するときや、ソファをリンサークリーナーで洗うとき。これまでは室内から延長コードを長く引き回していましたが、ポータブル電源を持っていくだけで済むようになりました。庭で大きめの板を切るときにも、電源に困らなくなりました。

上面が平らで、工具や部品を置ける
私が使っている機種は上面が平らで、工具や部品を置いておけます。作業台の横に置きっぱなしにしても邪魔になりません。
こうして日常で使っていれば、充電の残りや使い方が自然と頭に入ります。いざというときに慌てずに済むのは、ふだんから使っているからです。
外構やバルコニーの打ち合わせで「屋外コンセントを何か所付けるか」という話になったら、ポータブル電源を持ち出す使い方もあわせて伝えてみてください。玄関や勝手口の近くに充電しておく定位置を用意しておけば、外へ持ち出しやすくなり、使う回数も増えます。施主様の暮らし方まで踏み込んだ提案は、印象に残ります。
太陽光で充電できれば、長い停電にも備えられる
停電が長引けば、ポータブル電源の電気もいずれなくなります。そこで大事になるのが、太陽光パネルで充電できるかどうかです。
私も自宅のベランダで試しました。冬の午後から薄曇りという、決してよくない条件です。9時から17時までの8時間、220Wの両面受光型パネルで充電したところ、27%までたまりました。これだけで暮らすのは難しいものの、停電中にスマートフォンや照明、ルーターを動かすには助かる量です。

途中から曇ってしまったが、3割近く充電できた
なお、ポータブル電源は充電の速さも進化しています。私が使っていた機種は、家庭のコンセントからなら約60分で満充電になりました。
設計や外構の段階では、次の点を一緒に確かめておくと安心です。
- ベランダや庭に、パネルを広げられる日当たりのよい場所があるか
- そこから室内へ、ケーブルを引き込みやすいか
- 屋根に太陽光発電がある家なら、停電時に使える「自立運転用コンセント」がどこにあるか
自立運転用コンセントの近くにポータブル電源の定位置をつくっておけば、停電中も昼のうちに充電しておけます。太陽光発電を提案するときに、ここまでセットで話せる会社はまだ多くありません。
新築なら、最初から「電気をつくる家」を考えたい

太陽光と蓄電池で電気をまかなうオフグリッドの家のイメージ(メーカー写真)
電気代の値上がりもあって、電気をできるだけ自分たちでまかなう「オフグリッド」の考え方が、現実的な選択肢になってきたと感じています。屋根の太陽光発電、家庭用の蓄電池、そしてポータブル電源を組み合わせれば、電力会社の電気をできるだけ使わずに暮らすこともできます。
とはいえ、いきなり家全体を変えようとすると費用も大きくなります。まずは、ポータブル電源を「毎日使う設備」として1台組み込むところから始めるのがおすすめです。ルーターと冷蔵庫の停電対策から始めて、太陽光での充電、家庭用蓄電池へと、段階的に広げていけます。
私自身、これから戸建てを建てるなら、太陽光と蓄電池を最初から設計に組み込むつもりです。
備えは「毎日使う」ことで確かになる
ポータブル電源は、しまっておけば安心という道具ではありません。毎日使う場所に置き、毎日使うことで、いざというときに確実に動く備えになります。
- ルーターと冷蔵庫のそばに、ポータブル電源の置き場とコンセントを用意する
- 停電時に自動で切り替わる機能を使い、ふだんからつないでおく
- 掃除やDIYで日常的に持ち出し、使い方を覚えてもらう
- ベランダや庭に、太陽光パネルを広げられる場所を考えておく
なお、私が使っていたRIVER 2 Maxはすでに販売を終えていて、今は後継の「RIVER 3 Max」(容量572Wh、定格出力600W、重さ約4.7kg)が出ています。Amazonでは5万円前後で買えます。
引き渡しのときに、施主様と一緒にポータブル電源の置き場所と使い方を確かめておく。それだけでも「停電に強い家」の提案になります。防災を「グッズ」ではなく「住まいの設計」として話せることが、施主様から信頼される工務店の強みになるはずです。
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