南向きでなくてもいいとしたら? ― 人工の「青空」が、暗い部屋を家の特等席に変える

NEW!2026/10/3005:0938人が見ました

住まいの設計では、明るさを取れる場所と取れない場所が、間取りを大きく左右します。リビングは南側へ、水まわりや収納は北側へ。日当たりのいい場所を奪い合うように部屋を並べるのは、窓からしか自然光を取り込めないからです。

もし、窓のない場所に「天窓のある部屋」をつくれたらどうでしょう。この記事では、太陽光と青空を再現する照明「CoeLux」を、私が自宅の浴室に組み込んだ経験をもとにご紹介します。家具や家電のように置くものではなく、天井や壁に組み込む「住宅設備」として考えると、間取りの前提そのものが変わってきます。

製品の公式サイト:https://laforet-eng.com/coelux

公式サイト:https://www.kimuras.jp
X:https://x.com/hidenorikimura
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/hidenorikimura/

 

「ここ、最上階じゃないですよね?」

 

自宅の浴室に組み込んだCoeLux ST

自宅の浴室に組み込んだCoeLux ST

 

私の自宅は団地の一室をリノベーションしたもので、浴室には小さな窓が1つあるだけで、日中でも薄暗い場所でした。そこで天井にCoeLuxを組み込みました。

見学に来た方の半数ほどが、浴室に入るなり「あれ、ここ最上階じゃないですよね?」と聞いてきます。天井の上に本当の空があると思うほど、光の差し込み方が自然だからです。

 

天窓にしか見えない光の質(日本テレビ「沸騰ワード10」でも紹介されました)

天窓にしか見えない光の質(日本テレビ「沸騰ワード10」でも紹介されました)

 

CoeLuxは、イタリアのCoeLux社が開発した照明です。空が青く見える仕組み(光が大気の細かい粒にぶつかって散らばる現象)を、ナノ素材を使って照明の中で再現しています。そのため、まぶしい太陽の光と、その周りに広がる青空が、同時に見えるのです。

 

普通の照明とは、光の「中身」が違う

 

太陽光と一般的な照明の光の成分の違い

太陽光と一般的な照明の光の成分の違い

 

最近は、色味を朝から夜まで変えられるLED照明も増えてきました。ただ、CoeLuxの光はそれとはまったく別物です。

太陽の光には、さまざまな色の成分がまんべんなく含まれています。一般的な照明は、明るさや色味を似せることはできても、成分にはどうしても偏りが出ます。CoeLuxは成分だけでなく、光が差し込む角度や部屋の中での広がり方まで再現しているので、「そこに窓がある」と感じさせてくれます。

人が求めているのは、明るさそのものより「外とつながっている感覚」です。窓のない浴室やトイレ、地下の部屋で閉塞感が和らぐのは、この感覚があるからだと考えています。

 

地下や北側を、使える部屋に変える

 

地下だと言われなければわからない空間

地下だと言われなければわからない空間

 

天井に付けるタイプのほかに、壁に付けて窓があるように見せるタイプもあります。地下室や、隣家に囲まれて窓を開けられない部屋でも、自然光の入る部屋に近づけられます。

窓は、つくれる場所が限られます。つくれたとしても、天窓は雨漏りや掃除などのメンテナンスが心配の種になります。採光を窓に頼らずに済めば、これまで使い道がなかった場所にも、居室としての価値が生まれます。

 

月夜まで再現できたハイエンドモデル

月夜まで再現できたハイエンドモデル

 

私が取材した当時は、別のモジュールを付けると夜空に浮かぶ月まで映し出せるモデルもありました。寝室の天井に月明かりがあると、天井がなくなったかのような開放感があります。CoeLuxは、昼の光だけでなく、部屋の過ごし方そのものを演出できる設備だと感じました。

 

日本の住宅に入れやすくなった

 

ルーバーがなくなったLSシリーズ

ルーバーがなくなったLSシリーズ

 

以前のCoeLuxは、日本の一般住宅には少し入れにくい面がありました。光を斜めに出す仕組みのため、天井の上に大きな高さが必要だったからです。

その後のモデルでは、光をまっすぐ下へ出す作りになり、設置に必要な高さがおよそ半分になりました。天井高に余裕のない日本の住宅や、リノベーションでも検討しやすくなっています。光源の粒が見えないよう、細かい作り込みも進んでいます。

 

日の出から日没まで色を変えられるHTシリーズ

日の出から日没まで色を変えられるHTシリーズ

 

いまの「HT」シリーズは、専用のアプリから明るさや色味を調整でき、日の出から日没までの光の移り変わりも再現できます。小さい「HT 25 Mini」は防水の規格(IP65)にも対応していて、浴室や洗面所にも使えます。

 

小さな空間に部分的に光を取り入れるHT 25 Mini

小さな空間に部分的に光を取り入れるHT 25 Mini

 

デスクの上に付けて手元に自然光を落とすのもいいですが、私がおすすめしたいのは、少し高い位置に付ける方法です。暗さと自然光のコントラストが生まれ、光の差し込む地下の空間のような、特別な雰囲気をつくれます。住宅だけでなく、スパやサロンなどの店舗にも向いています。

 

細長い形のSky Line

細長い形のSky Line

 

細長い「Sky Line」は、空はほとんど見えませんが、広い範囲にきれいな光を広げてくれます。タワーマンションのように、玄関からリビングまでの廊下が暗くなりがちな間取りに入れると、家の中から薄暗い場所をなくせます。

 

設計の段階で押さえておきたいこと

CoeLuxは、あとから置くものではなく、天井や壁に組み込む住宅設備です。そのため、取り入れるなら設計やリノベーションの段階で考えておく必要があります。

  • 天井の中や壁の中に、本体を納める寸法を確保する
  • 電源と、明るさを調整するための制御(DALIという照明の規格や、専用アプリ)を、ほかの照明とあわせて計画する
  • 工事費は、建物や設置する場所の条件で変わる
  • 本体の価格は公開されていない(私が入れた旧モデルのSTは、1台およそ70万円でした)
  • 納期は、モデルによって発注から1か月〜4か月半ほどかかる

ここは、工務店の皆さんにぜひ押さえておいていただきたいポイントです。窓のない浴室や北側の部屋は、間取りの打ち合わせで「ここは暗くなりますが、仕方ありません」と説明されがちな場所です。そこで「この部屋には、天窓のような光を設備でつくれます」と一言添えられると、施主様にとって間取りの選択肢が一気に広がり、それだけで他社との大きな差になります。

特に、敷地が狭くて南側を確保しにくい都市部の住宅や、地下室・半地下を考えている施主様には響く提案です。「日当たりのいい土地」という条件を外せれば、土地探しの幅も広がります。

日本では、森ビルグループのラフォーレエンジニアリングが取り扱っていて、2025年には日本で製造する許可を得て、国内で作るモデル「Azzurro」も出しています。東京・六本木にショールームがあり、事前に連絡すれば実物を見られます。

決して安い設備ではありません。まずは自社のモデルハウスの浴室や廊下など、1か所に入れてお客様に体感してもらうのが、いちばん伝わる方法だと思います。

 

採光は、設備でつくれる時代へ

ここまで自然に光を再現できるなら、リビングを必ず南側に置く必要はなくなります。私自身も、いつか寝室をあえて暗い方角に置き、天井に月明かりの差すCoeLuxを組み込みたいと考えています。

日本では、似たような間取りの家が多くつくられてきました。これからは、一軒ごとの個性が家の価値を左右する時代になっていくはずです。窓の位置にしばられない間取りは、その大きな武器になります。採光を「設備でつくる」という選択肢を、お客様への提案に加えてみてはいかがでしょうか。

「この土地では明るい部屋はつくれない」とあきらめかけている施主様に、別の答えを出せること。それが、選ばれる工務店になるための一つの近道だと私は考えています。

 

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